複合用途の都環境は「建物全体を一つの用途」として考えないことが重要
弊社へ東京都建築物環境計画書、いわゆる「都環境」のご相談をいただく中でも、確認に時間がかかりやすいのが複合用途建築物です。例えば1~2階が店舗、3階以上が事務所、低層階が商業施設で上層階が共同住宅といった建物では、単純に「主用途は事務所だから事務所として評価する」という進め方はできません。
都環境では、建物の中にどの用途があり、それぞれ何㎡あるのかを整理したうえで、用途に応じた評価基準を適用します。特に省エネルギー性能については、事務所、ホテル、病院、百貨店、飲食店、学校、集会所、工場などで基準となるBEIが異なります。
そのため弊社で複合用途案件を受けた場合、最初に確認するのはBEIの数字ではありません。まず建物用途を整理し、「この室・このフロアはどの用途区分として計算されているのか」「省エネ計算書上の用途と都環境上の用途が一致しているか」を確認します。この整理をせずに取組・評価書を作り始めると、途中で評価基準そのものをやり直すことがあります。
例えば「事務所+店舗」でも店舗の内容によって扱いが変わります
複合用途で意外と見落としやすいのが、「店舗」という言葉だけでは都環境上の用途が決まらないことです。物販店舗であれば百貨店等として扱うケースがありますが、飲食店であれば飲食店等として扱います。クリニックなどが入れば病院等、フィットネスや集会用途であれば別の用途区分が関係することがあります。
設計図の用途欄に単に「テナント」と記載されている建物もありますが、都環境ではそれだけでは判断できない場合があります。テナント区画が物販なのか飲食なのか事務所なのかによって、省エネ計算上の基準も変わるからです。
弊社へ外注いただく場合も、「1階テナント300㎡」という情報だけではなく、可能な範囲で予定用途まで確認します。用途が未定の場合は、どの用途として省エネ計算されているのか、将来的な用途変更をどう扱うのかを設計者と確認したうえで進めます。
非住宅は用途によってBEIの評価基準が違います
都環境の複合用途で設計者にまず押さえていただきたいのが、用途によって同じBEIでも評価段階が変わるという点です。現在の評価では、大きく次のような違いがあります。
| 用途 | 段階1 | 段階2 | 段階3 |
|---|---|---|---|
| 工場等 | BEI 0.75以下 | 0.65以下 | 0.60以下 |
| 事務所等・学校等 | BEI 0.80以下 | 0.70以下 | 0.60以下 |
| ホテル等・百貨店等 | BEI 0.80以下 | 0.75以下 | 0.70以下 |
| 病院等・飲食店等・集会所等 | BEI 0.85以下 | 0.75以下 | 0.70以下 |
例えばBEI0.72の建物でも、事務所部分と飲食店部分では評価の見え方が変わります。そのため、複合用途建築物では建物全体のBEIだけを見て「段階2です」と判断するのではなく、用途構成を確認しながら評価する必要があります。
ここは一般的な省エネ適判の計算結果をそのまま転記するだけでは足りない部分です。都環境では、その省エネ計算結果をどの評価基準へ当てはめるかという作業が必要になります。
複数用途では用途ごとの一次エネルギー消費量を使って評価します
事務所と店舗、ホテルと飲食店など、複数の非住宅用途が混在する建物では、用途ごとの基準一次エネルギー消費量と設計一次エネルギー消費量を確認します。用途ごとに評価基準が違うため、単純に建物全体のBEIだけを一つの基準値と比較するのではありません。
都環境では、各用途の基準一次エネルギー消費量に、その用途に応じた段階基準値を掛け合わせ、それらを合計した値と設計一次エネルギー消費量を比較して評価します。
少し分かりにくいのですが、例えば事務所部分と飲食店部分が混在している場合、事務所には事務所の段階3基準、飲食店には飲食店の段階3基準を適用し、それぞれの基準一次エネルギー消費量に応じて建物全体として判定します。
弊社では、省エネ計算書を受け取ったらBEIの最終値だけを見るのではなく、用途別の基準一次エネルギー消費量・設計一次エネルギー消費量まで確認します。複合用途ではこの内訳が重要になります。
「建物全体のBEIが0.70だから段階3」とは限りません
複合用途の都環境でよくある誤解が、「BEIが0.70なら段階3ですよね」という判断です。単一用途であれば比較的分かりやすいのですが、用途ごとに基準値が違う建物では、建物全体のBEIだけで段階を判断できない場合があります。
例えば工場等では段階3がBEI0.60以下ですが、ホテル等では0.70以下です。工場とホテルが混在する建物なら、それぞれの用途の基準一次エネルギー消費量を考慮して建物全体の評価基準を出します。
そのため、弊社では複合用途案件について「BEI○○なので段階○です」と数字だけで回答せず、まず用途構成を確認します。設計者からすると少し手間に見えるかもしれませんが、ここを最初に整理しておく方が提出直前の修正を減らせます。
住宅+非住宅の複合用途はさらに分けて考えます
共同住宅の1階に店舗がある建物や、低層階が商業施設、上層階が住宅という建物では、住宅用途と住宅以外の用途を分けて評価します。
例えばRC造10階建てで、1階が物販店舗、2~10階が共同住宅という建物なら、住宅部分については住宅用途として評価し、1階店舗は非住宅用途として評価します。省エネルギー性能だけでなく、再生可能エネルギー、資源の適正利用、緑化などについても、項目ごとの評価方法を確認して取組・評価書へ反映します。
弊社でこのタイプの案件を受けるときは、最初に「住宅用途」「非住宅用途」の床面積を分け、それぞれの計算書・図面・設備条件を整理します。住宅と非住宅で設備系統が完全に分かれている建物なら比較的整理しやすいのですが、共用する設備やスペースがあると少し複雑になります。
住宅用と店舗用で設備系統が分かれているか確認
複合用途建築物では、用途だけでなく設備系統も重要です。例えば住宅部分は各住戸個別空調、店舗部分はパッケージエアコン、共用部は別系統という計画であれば、用途と設備の対応関係を比較的整理しやすくなります。
一方、中央熱源を複数用途で共用している建物や、給湯・換気・照明の一部を複数用途で共有している建物では、どの一次エネルギー消費量がどの用途に計上されているかを確認する必要があります。
弊社で外注を受けた際も、平面図だけでは設備の範囲が分からない場合は、空調設備図、換気設備図、給湯系統図、電気設備図などを確認します。複合用途の都環境では「建築図だけ渡せばすべて計算できる」というより、省エネ計算に使った設備条件と設計図を照合する作業が重要です。
共用部をどの用途へ入れるかで迷うケースがあります
複合用途では、エントランス、廊下、階段、機械室、管理室、駐車場などの共用部分をどう整理するかで迷うことがあります。住宅専用の共用部なのか、店舗専用なのか、複数用途で共用する部分なのかによって扱いが変わるためです。
例えば住宅専用エントランスと店舗用出入口が完全に分かれていれば整理しやすいのですが、住宅と店舗が同じ風除室・共用廊下を利用する建物もあります。
こうした場合に、都環境だけを見て独自に用途を決めるのではなく、省エネ計算上どの用途として扱われているのか、確認申請上の用途・床面積がどう整理されているのかまで確認します。複合用途案件では、この「用途別床面積」が途中で変わると、環境計画書だけでなく省エネ計算にも影響する可能性があります。そのためテナント区画や共用部の変更がある場合は、都環境担当にも共有していただくようにしています。
モデル建物法でも複合用途の整理は必要
省エネ計算をモデル建物法で行っている場合でも、複合用途だから用途整理が不要になるわけではありません。例えば事務所モデルと物販店舗モデル、飲食店モデルなど、建物の各部分に対応するモデルを使って計算します。
そのため、都環境を外注する際には、省エネ適判で提出した計算結果だけでなく、モデル建物法の入力シートや計算結果一式もいただけると確認が早くなります。
弊社でよくあるのが、PDFの結果だけを受け取り、最終BEIは分かるものの用途ごとの基準一次エネルギー消費量が分からないケースです。単一用途なら対応できても、複合用途では内訳を確認しないと都環境の段階評価まで正確に整理できないことがあります。
外注する場合は、省エネ計算の最終結果だけではなく、計算根拠まで渡すことがポイントです。
標準入力法の場合はさらに設備区分との整合を確認
標準入力法で計算している複合用途建築物の場合、室用途や設備入力が細かく設定されているため、都環境側でも確認できる情報は多くなります。一方で、入力内容と最新図面が一致しているかの確認も必要になります。
例えば事務所として入力していた区画が途中から飲食店になった、倉庫だった部分が店舗になった、テナント面積が変わったという場合、省エネ計算の用途設定そのものに影響する可能性があります。弊社としては、複合用途建築物ほど「省エネ計算が終わったから都環境を作る」という順番ではなく、都環境の作成中にも用途変更がないか確認することが重要だと考えています。
特にテナントビルでは、設計中に入居テナントが決まり、用途が変更されることがあります。都環境の提出直前に用途が変わった場合は、省エネ計算から確認し直す必要がないかチェックします。
再生可能エネルギーも住宅・非住宅で整理します
複合用途建築物では、太陽光発電設備などの再生可能エネルギーについても、どの用途で利用する設備なのか確認します。
住宅用途と非住宅用途がある場合、それぞれの用途について評価基準への適合を確認するのが基本です。ただし、1つの太陽光発電設備を建物全体で利用するなど、用途ごとに明確に分けることが難しいケースもあります。
弊社では、太陽光発電設備の系統図、パワーコンディショナー、電力の接続先などを確認し、住宅側・非住宅側のどちらに利用する計画なのか、共用するのかを整理します。
「屋上に太陽光10kWがあるので住宅も店舗も段階3」といった単純な判断はせず、実際にその電力をどこで利用する計画なのかを確認して取組・評価書へ反映します。
EV充電設備も複合用途では駐車場区分から整理します
事務所+店舗、住宅+店舗などの複合用途では、EV・PHV充電設備の確認も少し複雑になります。例えば住民専用駐車場、テナント従業員用、来客共用、荷さばき用が同じ敷地内に存在する場合があります。
この場合、「駐車場合計40台だから○台の充電設備」という計算ではなく、それぞれの駐車区画が専用なのか共用なのか、制度上の算定対象になるのかを整理します。
弊社で都環境の複合用途案件を扱う際は、駐車場平面図上で住宅用・店舗用・事務所用・共用などを分けて確認します。ここを曖昧にしたまま電気設備設計が進むと、都環境を作成した段階で充電設備や将来配管が不足することがあります。
緑化・水循環・資源関係も用途とは別に建物全体で見る項目があります
複合用途だからといって、すべての評価項目を用途別に二重計算するわけではありません。都環境には、エネルギー性能のように用途ごとの条件が大きく影響する項目がある一方、敷地や建物全体で評価する項目もあります。
例えば緑化、水循環、建設資材、長寿命化などは、建物全体の計画を確認しながら評価します。
ここが複合用途の都環境を難しくしている部分でもあります。すべてを用途別に分ければよいわけでも、すべて建物全体でまとめればよいわけでもありません。
弊社では、項目ごとに「住宅・非住宅を分ける項目」「建物全体で評価する項目」を整理して取組・評価書を作ります。この切り分けまで含めて外注することで、設計担当者側の確認作業をかなり減らせます。
複合用途の都環境では図面の「用途名」を揃えてください
申請実務で意外と時間がかかるのが、図面によって用途名が違うケースです。例えば確認申請では「物販店舗」、省エネ計算では「百貨店等」、平面図では「テナント」、設備図では「店舗」と書かれていることがあります。
制度上それぞれの表現が間違っているわけではありませんが、都環境を作る側としては「すべて同じ区画を指しているのか」を確認する必要があります。
さらに「ラウンジ」「多目的室」「サービススペース」「バックヤード」など、名称だけでは用途区分が分からない室もあります。
弊社へ外注いただく場合、この確認をこちらで整理しますが、用途一覧や面積表があるとかなりスムーズです。特に大規模な複合用途では、フロア・室名・用途区分・床面積を一覧化した資料があると、省エネ計算と都環境を照合しやすくなります。
外注するなら省エネ計算書だけでなく図面一式を渡してください
「省エネ適判は終わっているので、その計算書から都環境だけ作ってください」というご依頼もあります。もちろん計算書は非常に重要ですが、複合用途の場合は計算書だけでは完結しないことが多くあります。
弊社で確認したい資料は、建築概要、配置図、各階平面図、立面図、断面図、仕上表、用途別床面積表、省エネ計算書、空調・換気・給湯・照明設備図、電気設備図、太陽光設備図、駐車場計画、緑化計画などです。
すべてが最初から完成している必要はありません。ただし、どの資料が未確定なのかを把握したうえで作業を開始した方が、後から何度も数字を入れ直すことを防げます。
弊社では資料を受け取った段階で不足資料を確認し、「今すぐ必要なもの」「後で確定すればよいもの」を分けて設計者へお伝えするようにしています。
都環境だけを外注しても省エネ計算の整合確認は必要
弊社へ都環境だけをご依頼いただき、省エネ計算は別会社が担当している案件もあります。この場合でも、いただいた計算結果をそのまま転記するだけではありません。
特に複合用途では、都環境で使用する用途分類、床面積、BEI、基準一次エネルギー消費量などが、省エネ計算書のどこに対応しているか確認します。
例えば平面図では店舗面積500㎡なのに、省エネ計算書では400㎡しか計算されていれば、その差が倉庫なのか非空調部分なのか、単純な図面変更なのかを確認します。
都環境専門の代行会社としては、「計算結果を入力すること」より、その結果を都環境の評価へ正しく変換できる状態か確認することの方が重要だと考えています。
確認申請・省エネ適判・都環境で用途と面積を合わせます
複合用途建築物では、確認申請、省エネ適判、都環境の3つで用途や床面積が微妙に違っていることがあります。制度ごとに面積の考え方が違う部分はありますが、単純な図面不整合で数字が違っている場合は整理が必要です。
特にテナント区画の変更、共用部の変更、駐車場台数の変更などは、複数の申請へ影響します。
弊社では都環境を作る際、建築概要と省エネ計算だけを見るのではなく、現在の確認申請図面がどの版なのかも確認します。古い図面をもとに都環境を作ってしまうと、提出直前に最新図へ合わせて全面的に修正することになるからです。
複合用途ほど変更箇所が多くなるため、図面の「最新版管理」も外注時の重要なポイントです。
複合用途は「一番大きい用途だけ見ればよい」は間違い
都環境の取組・評価書には最も大きい用途を記載する箇所がありますが、だからといって最大用途だけ評価すればよいわけではありません。
例えば事務所8,000㎡+飲食店1,000㎡なら、面積としては事務所が圧倒的に大きくても、飲食店部分についても一次エネルギー消費量や用途別基準を考慮します。
飲食店は厨房設備や給湯なども関係し、一般的な事務所とは設備構成が大きく違います。面積が小さいから無視してよいというものではありません。
弊社では、主用途だけでなく、小さい用途が建物全体の評価へどの程度影響しているかまで確認しています。特に高い段階評価を目標としている案件では、小規模テナント部分の性能が全体評価へ影響することがあります。
段階3を目指す案件ほど用途別の性能確認が重要
最低限の提出を目的とする案件より、都環境で高い評価を取得したい案件の方が、複合用途の用途別計算は重要になります。
例えば事務所部分は十分に段階3相当でも、飲食店部分の設備性能が低ければ、複合用途として段階3へ届かない可能性があります。この場合、建物全体の設備をすべて変更する必要はなく、どの用途のどの設備が評価を下げているかを確認します。
弊社では高評価を目標にする案件の場合、省エネ計算結果を用途別に確認し、「事務所は余裕があるが店舗側が厳しい」「空調より給湯の影響が大きい」といったところまで整理します。
都環境は提出書類を作るだけではなく、設計途中でこうした結果をフィードバックすることで、性能を上げるための判断材料としても使えます。
複合用途の都環境は設計完成後に外注するより、初めから依頼する方が進めやすいです
複合用途建築物で一番避けたいのは、確認申請・省エネ適判・設備設計がすべて終わった後に都環境を作り始め、初めて用途や設備の不整合が見つかることです。
単一用途なら修正範囲が限定されることもありますが、複合用途では一つの変更が用途別床面積、省エネ計算、設備系統、駐車場計画など複数項目へ影響することがあります。
そのため弊社では、用途構成とおおよその床面積、設備計画が見えてきた段階からご相談いただくことをおすすめしています。最初からすべての図面が揃っていなくても、「この用途構成ならどの計算が必要か」「都環境でどの資料が必要になるか」を先に整理できます。
都環境の外注は、完成した書類を清書してもらうというより、設計途中から申請に必要な条件を整理してもらう使い方の方が、複合用途ではメリットが大きいと思います。
複合用途の都環境申請を外注する際に弊社が最初に確認
弊社では複合用途の都環境をご依頼いただいた場合、まず建物用途、用途別床面積、住宅・非住宅の有無、省エネ計算方法、設備系統、駐車場、再エネ設備などを確認します。
そのうえで、どの部分を用途別に評価するのか、どの部分を建物全体として評価するのかを整理し、必要資料をリストアップします。
この最初の整理ができれば、その後の取組・評価書作成はかなり進めやすくなります。逆に用途区分が曖昧なまま作り始めると、省エネ計算書、設備図、都環境の数字がそれぞれ違う状態になりやすくなります。
複合用途建築物の都環境は、Excelへ数字を入力すること自体が難しいわけではありません。どの数字を、どの用途として、どの評価基準へ当てはめるのかを整理することが一番重要です。
複合用途建築物の都環境申請・計算もご相談ください
「住宅+店舗で住宅用と非住宅用のどちらの取組・評価書が必要か分からない」「事務所・店舗・飲食店が混在していてBEIの評価方法が分からない」「省エネ適判は別会社で完了しているので、都環境だけ外注したい」「複数用途の段階評価まで含めて確認してほしい」といったご相談にも対応しています。
当社では、事務所、店舗、ホテル、共同住宅、飲食店、病院、学校、工場などが混在する複合用途建築物について、用途区分の整理、省エネ計算結果の確認、用途ごとのBEI・一次エネルギー消費量の評価、取組・評価書の作成、EV充電設備・再生可能エネルギー・緑化など各評価項目の整理まで対応しています。省エネ計算そのものは別会社へ依頼済みという案件でも、計算結果をもとに都環境申請だけ対応できます。 複合用途は設計が完成してから整理するほど確認箇所が増えますので、用途構成と基本図が決まった段階からお気軽にご相談ください。





