私たちのところには、「省エネ計算は別の会社で終わっています。都環境の申請だけお願いできますか?」というご相談があります。結論から言えば、このような依頼方法は可能です。東京都建築物環境計画書制度に必要な計算や設計資料がすでに揃っているのであれば、それらを引き継ぎ、計画書の作成や評価内容の整理、根拠資料の準備、東京都への提出実務を外注するという切り分け方ができます。
そもそも東京都建築物環境計画書制度では、延べ面積2,000㎡以上の建築物を新築・増築・改築する建築主が原則として義務提出の対象となり、2,000㎡未満でも任意提出が可能です。計画時の提出期限は、建築確認申請等の日または認定申請の日のいずれか早い日までとされています。
ここでポイントになるのが、制度上の提出義務者と、実際の申請書類を作成する実務担当者は分けて考えられるということです。建築主や設計者がすべての入力・資料整理を自分で行わなければならないわけではありません。私たちのような都環境の実務を扱う外部会社へ、申請準備から提出対応までを切り出すことで、設計担当者の作業を減らすことができます。
特に「省エネ適判用の計算はすでに完成している」「確認申請図面もほぼ確定している」「都環境だけ社内で経験者がいない」という案件であれば、申請業務だけを外注する方法は非常に相性がよいと考えています。
2025年4月から都環境の提出はWEBシステムへ移行
現在の都環境申請で知っておいていただきたいのが、提出方法の変更です。2025年4月1日以降に建築物環境計画書を提出する案件については、東京都の「建築物環境計画書制度システム」を利用してWEB上で計画書を作成・提出する仕組みになっています。従来のように書類を作成して窓口へ持参することを前提とした制度ではなくなっています。
システム上で建築物環境計画書の各項目を入力し、必要な届出書を作成したうえで、根拠資料についても原則としてPDFで登録します。東京都の手引では、審査を円滑にするため、評価根拠となる箇所をマーカーや枠などで分かるようにし、必要に応じて補足説明を記載した資料を登録するよう案内しています。
つまり現在の「都環境の申請代行」は、単純に完成した書類を東京都へ送る作業ではありません。WEBシステムへの入力、必要資料のPDF化、評価箇所の整理、資料との整合確認などを含む実務になっています。
設計者にとっては、この部分が意外と時間を取られます。制度に慣れていれば問題なく進められますが、数年に一度しか都環境案件がない設計事務所の場合、最新の手引を読み、必要様式を調べ、システムの使い方を確認しながら進めるだけでもかなりの作業になります。そのため、「計算はできるので申請部分だけ外注したい」というニーズが出てくるわけです。
申請だけ外注する場合はどこまで任せられるのか?
都環境の「申請代行」と言っても、実際にはいくつかの作業があります。どこまで外注するかは案件や設計会社の体制によって変えられますが、代表的な範囲を整理すると次のようになります。
| 業務 | 申請代行で行う主な内容 |
|---|---|
| 支給資料の確認 | 図面、省エネ計算書、設備資料などを確認 |
| 必要資料の整理 | 不足している評価根拠や図面を整理 |
| 計画書作成 | 建築物環境計画書の必要事項を入力 |
| 取組・評価書作成 | 設計内容を各評価項目へ反映 |
| 関連計画書作成 | 該当する再エネ・EV関連資料等を整理 |
| 根拠資料作成 | 評価箇所を明示したPDF資料等を準備 |
| WEB申請対応 | 建築物環境計画書制度システムで提出準備 |
| 質疑・補正対応 | 東京都からの確認事項への回答・資料修正 |
2025年度制度では、建築物環境計画書提出書、建築物環境計画書、取組・評価書に加え、案件に応じて再生可能エネルギー調達計画書や電気自動車充電設備整備計画書なども扱います。
そのため、「申請だけ」と言っても実際の作業範囲は意外と広いです。完成したExcelやPDFを単にアップロードするだけのケースもあれば、設計図書から必要情報を拾い、評価項目を整理したうえで申請データを作成するところから必要になるケースもあります。
私たちは見積もりの段階で、すでに完成している業務と、こちらで対応する必要がある業務をできるだけ分けて考えます。省エネ計算まで完成しているのであれば、重複して計算費用をいただく必要はありません。逆に必要な評価資料が不足していれば、その部分だけ追加業務として整理する方が分かりやすいと考えています。
省エネ計算が終わっていれば、申請のみ外注できます
「他社で行った省エネ計算でも大丈夫ですか?」という質問もあります。基本的には、必要な計算結果と根拠資料が揃っており、計画内容と整合しているのであれば、それをもとに都環境の申請資料を作成することができます。
東京都の制度でも、建築物省エネ法に基づく計画情報を活用しながら建築物環境計画書を作成する考え方が取られています。省エネ適判や省エネ計算で使用したWEBプログラムの計算結果、外皮関係の計算結果、設備仕様などは、都環境側でも重要な根拠資料になります。
ただし、注意したいのが「計算結果がある=そのまま都環境申請が完成する」というわけではないことです。都環境では、省エネ性能以外にも再生可能エネルギー、EV・PHV充電設備、緑化、生物多様性、資源利用、ヒートアイランド対策などさまざまな環境配慮項目を扱います。
そのため、省エネ計算は完成していても、都環境独自の評価に必要な資料が不足している場合があります。その場合は、外構図、緑化関係図面、設備図、仕様書、構造関係資料などから必要な情報を追加で確認します。
計画書作成では「評価の根拠」を揃えること
実際に都環境の申請を進めていると、計画書へ数字を入力すること以上に時間がかかるのが根拠資料の整理です。
例えばある評価項目について「対応している」と入力するのであれば、それを図面や仕様書のどこで確認できるのかを示す必要があります。東京都の現在の手引でも、WEBシステムへ根拠資料を登録する際、評価を行った根拠箇所にマーカーや枠囲みなどを施し、キャプション等によって補足説明を記載することが推奨されています。
設計者の立場からすると、この作業は地味ですがかなり時間を取られます。平面図、立面図、矩計図、設備図、外構図、緑化資料、省エネ計算書など複数の資料を行き来しながら、「この評価の根拠はこのページ」と整理する必要があるからです。
都環境申請を外注するメリットは、計画書への入力そのものよりも、このような申請実務をまとめて外へ切り出せるところにあります。
東京都への提出後に質疑が来ることもあります
計画書をWEBシステムから提出したら、それですぐにすべて完了するわけではありません。東京都側で内容が確認され、必要に応じて評価内容や根拠資料について確認を求められる場合があります。制度上も東京都は提出された計画書を確認し、その概要や評価内容を公表する仕組みになっています。
そのため、申請だけを外注する場合でも、見積もり時には「提出まで」なのか「提出後の質疑対応まで」なのかを確認していただくことをおすすめします。
例えば、計画書の作成と提出だけを外注し、質疑が来たら設計者側で対応する契約であれば、申請後に都環境の手引を読みながら回答することになります。一方、提出後の確認事項についても代行会社が内容を整理し、必要な根拠資料を確認して回答まで進めるのであれば、設計担当者の負担はかなり変わります。
もちろん、設計変更が必要な内容や設計者自身の判断が必要な事項については、設計者へ確認しなければなりません。しかし、制度上の説明や既存資料から回答できる内容まで毎回設計者へ戻す必要はありません。
私たちは、都環境の申請代行を依頼する目的は「計画書を作ること」ではなく、設計者が都環境の申請実務に費やす時間を減らすことだと考えています。
都環境の申請は確認申請の直前に慌てない
東京都建築物環境計画書の計画時の提出期限は、建築確認申請等の日または認定申請の日のいずれか早い日までです。2025年度の東京都資料でも、この提出期限が明記されています。
そのため、「確認申請を出してから都環境をやろう」と考えるのではなく、確認申請図面がまとまってきた段階で並行して準備を進める必要があります。
ここでよくあるのが、確認申請予定日の直前になってから「都環境も必要だった」と分かるケースです。省エネ計算が完成していても、取組・評価書の作成、再エネ関連の確認、EV充電設備、緑化・外構資料の整理などが必要であれば、すぐ提出できるとは限りません。
確認申請の日程が決まっている案件ほど、早めに資料をお送りいただくことをおすすめします。まだ完全に図面が確定していなくても、現在の設計図書を見れば、申請までに何が必要になるのかを事前に整理できます。
「提出だけ」と「計画書作成から提出まで」は分けて考える
都環境申請の外注では、「申請だけお願いします」という言葉が、人によって違う意味で使われています。
すでに建築物環境計画書や取組・評価書まで完成していて、本当にWEBシステムでの提出作業だけを依頼したい場合もあります。一方で、省エネ計算までは済んでいるものの、都環境の計画書自体は何も作成しておらず、「計画書作成から提出まで」をまとめて申請代行と呼んでいるケースもあります。
この違いによって必要な作業量も費用も変わります。
| 現在の状態 | 主に必要になる業務 |
|---|---|
| 計画書まで完成済み | 内容確認・WEB提出 |
| 省エネ計算まで完成 | 都環境評価・計画書作成・根拠資料整理・提出 |
| 図面のみ完成 | 評価に必要な計算・資料整理・計画書作成・提出 |
| 基本設計段階 | 必要資料の整理・今後の進め方確認から対応 |
そのため、見積もりを依頼するときには「都環境申請希望」とだけ書くより、「省エネ計算済み」「計画書未作成」「質疑対応まで希望」といった現在の進捗状況を教えていただけると、より正確に業務範囲をお伝えできます。
変更届・完了届まで考えるとワンストップ外注できる代行会社が楽です
東京都建築物環境計画書制度は、最初の計画書を提出して終わる制度ではありません。工事の途中で主要な計画内容に変更が発生すれば変更届が必要になる場合があり、工事完了後には完了届を提出します。2025年度の手引では、完了届は原則として検査済証の発行日を工事完了日とし、その翌日から30日以内に提出することとされています。
そのため、最初の申請だけ外注する場合でも、「変更が発生した場合は対応できるか」「完了届まで継続してお願いできるか」を確認しておくと後が楽です。
計画時の申請を行った会社であれば、当初の評価内容や提出資料を把握しています。工事中に設計変更が発生した場合も、どの評価項目へ影響するのかを確認しやすく、完了時には計画と実施結果を比較しながら資料を整理できます。
都環境を単発の書類作成として考えるより、「計画時→変更→完了」まで一連の手続きとして考えた方が、設計会社側の管理もシンプルになります。
都環境の申請だけ外注したい場合もご相談ください
当サイトでは、東京都建築物環境計画書制度について、省エネ計算からまとめて依頼したい案件だけでなく、「省エネ計算はすでに完了しているので都環境の計画書作成からお願いしたい」「計画書はある程度作ったので内容確認と提出をお願いしたい」「東京都への提出後の質疑対応まで任せたい」といった部分的なご相談にも対応しています。
すでに社内や別の省エネ計算会社で完了している業務があれば、その部分まで重複して依頼する必要はありません。現在お持ちの計算書、平面図、立面図、断面図、設備図、外構・緑化関係資料などを確認し、都環境申請に不足している業務だけを整理してお見積もりします。
「都環境の経験者が社内にいない」「確認申請が迫っているので申請実務だけ任せたい」「省エネ計算まではできるので、東京都独自の計画書作成以降を外注したい」「提出後の質疑対応までまとめて任せたい」という設計事務所・建築会社の方は、ぜひ現在お持ちの資料を添えてお見積もりをご依頼ください。必要な部分だけを外注することで、都環境対応にかかる社内工数を減らし、設計者が本来の設計業務へ集中できるようお手伝いします。




